現金贈与契約書 名義預金
現金贈与契約書 名義預金
東京地方裁判所、平成26年4月25日判決に名義預金について判断されたものがあります。この案件は被相続人が父親、相続人を母親、長男、次男及び長女の4人とするもので、被相続人である父親が生前に相続人等の名義で定期預金を作っていたのだそうです。
この定期預金は、父親の財産とはっきり区別されて保管されていたそうです。また、長女の主張では約30年も前からその定期預金の存在を知っていたとのことです。
「はっきり区別されていた」「長女が存在を知っていた」という主張からすれば、実際に贈与があって長女の定期預金であると思いますよね?
ところが判決では、これは名義預金として父親固有の財産と判断されたのです。そして有効な贈与があったとは認められず、これらの名義預金は被相続人である父親の財産として相続税の対象と判断されました。
判決要旨を見てみると、「贈与契約書が作成されていない」ということが1つの理由として挙げられています。贈与は贈与者のあげました、受贈者のもらいましたの関係が成立すれば契約としては成り立つはずですが、それを証明する1つの要素が贈与契約書なのです。今回のケースはそれがありませんでした。
また、贈与の金額が贈与税の非課税限度額内だったのです。このようなケースでは贈与税の申告書は出されていないものと思います。つまり過去の税務申告書があればある程度贈与の事実を主張できるはずですが、こういった記録もなかったのです。専門家のドバイスを受けていれば、非課税限度額を少し上回る金額で贈与をし、贈与税の申告をすることで贈与があった事実を記録として残す対策がとられたかも知れません。
そして、定期預金の証書は父親の手元に保管されていたそうです。そしてこれらから、「各預入金額を、直ちに各名義人に贈与するという確定的な意思があったとまでは認められない」と判断されています。
贈与の本質について
また判決では「贈与の本質は、受贈者が当該資産を自由に消費・利用・転貸・売却できる状況にある」として贈与契約成立の本質を指摘しています。
どうでしょうか?贈与に詳しい専門家に相談していれば、少なくとも贈与契約書は作成していたでしょうし、贈与税の非課税枠を少し超える金額で贈与を行うことで贈与税の申告書を出すという対応も多く行われています。そして最後の「受贈者が当該資産を自由に消費・利用・転貸・売却できる状況にある」の部分についても具体的なアドバイスがあったはずです。
贈与についてはこのように、後に有効な贈与があったことを証明できるように注意深く行う必要があります。そうでないとこのケースのように贈与が認められず、亡くなった父親の気持ちが実現できなくなってしまいます。またこれは亡くなった後ですので、取り戻すことができないのです。
このように、実際の贈与に当たっては確認すべき事項が多岐にわたり、専門性が高くなります。実際の贈与に当たっては、専門家のアドバイスを受けることが望ましいでしょう。